2002/10/21(月)


 レベル92になった。

 このところ知り合いも増えてきて夕方以降にログインすると大抵誰かとパーティーを組んで狩りをすることになるのだが、さすがに昼間にはなかなかそういう相手も見つからず、仕方なく一人で狩りをすることになる。

 メイジのソロ狩りはみじめなものである。
 戦士しか使ったことのない人には「メイジ=魔法連発してモンスター狩りまくり」というイメージがあるのかもしれない。だが、それは大いなる勘違いというものだ。思い込み、いや幻想と言い換えてもいい。そして、多くのメイジプレイヤーたちもまたその幻想を抱いてメイジを育て、やがてその幻想が正しく幻想であったことを知る。

 メイジにとって一人で殺せるモンスターの上限は非常に低い。どう育ててみてもサイクロプスが限界、時間をかければオーガまではどうにか殺せるが、その効率は非常に悪い。高レベルのメイジはこのことを熟知しているため、間違っても一人でサイクロプスを倒しに行こうなどとは考えない。時間の無駄だからだ。おまけに死ぬ可能性さえある。では、高レベルのメイジはどこへ行くのか。──蠍なのである。

 もしあなたが戦士で、メイジのそういった事情を知らず、さらにちょっとしたヒマがあったならば街の蠍ピットに行ってみると良い。そこにはキャップやハットをかぶりウィザードホウブルクやナイトプレートレギンスに身を包んだレベル90オーバーのメイジたちが押し寄せ、たった1匹の蠍相手にEnergy Strikeを撃ちまくっているという悲しくも凄絶な光景が繰り広げられているはずだ。──そう、それは戦士にとってレベル60以下の稼ぎ方である。だが、効率を計算し、安全を考えると、メイジにとってこれが一番のやり方なのだ。

 しかし、さすがに毎日毎日サソリ狩りでは飽きてくる。そこで刺激を求めてロッキーハイランドやミドルランドへ出かけると目に見えて経験値効率が悪くなる。おまけにミドルランドでは敵国人に殺されるという不要な刺激付きだ。こういう経験を繰り返した結果、レベル90オーバーのメイジたちは蠍ピットに引きこもるようになるのである。無論、私もその一人だ。

 ただ、最近気付いたことがある。それは蠍ピットよりも蛇ピットの方が効率が良いのではないかという事実だ。蛇。正式名は双頭の蛇。旅行者レベルの敵である。これをEXP+20の杖で殺しまくると非常に効率が良い。──念のために繰り返すが、私のレベルは92である。


 母さん、僕も戦士になりたいです。



 2002/10/22(火)


 最近、庭に行くと透明化したメイジをよく見かける。彼らは透明化したまま庭中を走り回り、戦死したプレイヤーの遺品を拾い集めているのだ。もちろん、拾うのは遺品だけではない。ひどいメイジになると透明化したまま見ず知らずのパーティを追跡し、そのパーティが倒したモンスターのドロップアイテムを奪い取ろうとする。(というより大抵のメイジは無意識にこれをやっている)。

 今日見かけたのもそんなメイジの一人であった。彼はひたすらにInvisibilityとGreat Staminar Recを使い(多分F2とF3に登録してあるのに違いない)透明化しているのをいいことに他人の倒したモンスターから金品を拾い続けていた。
 周囲からは「thief」やら「fuckin mage」やらいう言葉の雨あられである。だが、インビジメイジ君はそんな罵言など気にも留めない。そりゃそうである。だって彼は姿が見えないのだから。

 そんな彼の行動が崩れたのは、ほんの些細なことからだった。それは、彼が透明化した状態から延長のためのInvisibilityを詠唱した瞬間だった。突如として彼の背後に10体ほどのトロルが湧き、あっというまに取り囲んだかと思うと一斉に彼を攻撃し始めたのだ。彼は焦ったに違いない。そして、そのときほとんど唯一の脱出口となっていた右上方向に向かって走ろうとしたのだった。

 おそらく焦りまくっていたのであろう彼とは対照的に透明化していた私はまったく冷静に、彼の逃げ出そうとした進路に立ちふさがった。彼は私に衝突し、トロルの群れに押し戻された。そのままトロルの波に飲み込まれる彼。「ぐぇぇ」という断末魔の旋律が響いたのはその2秒後のことだった。きっとこのとき彼は「ラグった」と思ったに違いない。だが真相は違う。私が(明確な意図をもって)殺したのだ。

 私はすぐにトロルの波をかきわけて彼の死体をあさった。──が、そこにあったのはスライームジェリー2個という、我が目を疑う代物だったのである。このとき、私はほんの一瞬前の自分の心に芽生えた残酷な衝動を押しとどめなかった事実に対してちょっとした罪の意識を覚えた。そう、もしかすると彼は本当にどうしようもないほど貧しくて、それがためにかような盗賊的行為を働いたのであるかもしれないのだ。もしかするとこのたった2個のスライームジェリーは彼の人生を助ける生活費となったかもしれないのだというのに。

 そこまで考えて、私は貧しい彼のためにとたったいま拾い上げたスライームジェリーをその場に置き、そして彼の遺体に別れを告げたのだった。たった一瞬の儚き巡り合い。その一つがまた、ここエルディニアルガーデンの片隅で幕を閉じたのである。



 要約すると、「もっとマシなもん落とせや、このゲス野郎が」ということである。



 2002/10/23(水)


 レベル93になった。

 ところで私はすでにこのゲームを4ヶ月近くもプレイしているのだが、それだけの期間やり続けていると日常生活に色々と支障が出てくる。たとえば寝不足になったり他のゲームができなくなったりといった事象だ。だが、これ以外にもヘルブレス中毒者には他のオンラインRPGプレイヤーには見られない障害が現れる。その一例を挙げてみよう。


・ 発想や思考が暴力的になる。
 あまり良くない現象である。ヘルブレス歴が長くなると、騒がしい隣人や無茶な要求をしてくる上司(zerk meとか)に対して、「こいつ殺していいの?」という考えがまず最初に頭に浮かぶようになる。もちろん実際に殺して犯罪者になってしまうと重大なペナルティが課せられるので大抵のプレイヤーはそういった殺意を抑えるのだが、度を越した相手に対して殺意を行動に移すのは心身ともに解放されるものであるし、周囲からの賞賛も得られるので決して悪いことではない。

・ 頭のおかしい人に対して寛容になる。
 これは良いことだ。世の中には「キチガイではない(と医師に判断された)ものの実際には紙一重」という人が結構たくさんいて、一般的に常人はそうした人々をちょっとした哀れみと嫌悪の目で見るものである。だが、ヘルブレスを長くやっているとそうしたキチガイ一歩手前の人などというものが全然大したことのない存在であることに気付くようになる。世の中には本当に本当のキチガイというものが存在していて、しかもあろうことか自分と同じゲームにさえ干渉しているのだということを知るのだ。そういった存在と比較すれば「ちょっと頭のおかしい人」など気にかけるほどのものではないのだと悟るのである。

・ 物を見間違える。
 これは重大な問題である。たとえば先日私は道端に落ちている十円玉を見た瞬間、「よっしゃレア盾ゲットー!」とダッシュしてしまった。(実際にはダッシュしかけただけだったが)。このことを知人のヘルブレスプレイヤーに告げると、彼は「アホか」と一言応えただけだった。だが、彼は知らないのだ。道端に落ちている十円玉と木盾がどれだけ似ているかということを。

参考画像


十円玉


木盾


 見たまえ。そっくりではないか。形といい色ツヤといい、瓜二つである。
 この他にもキッチンに落ちた爪楊枝をクリティカルエストックと見間違えたり、ソースの染みをナイトホブークと見間違えたり、重度のヘルブレスプレイヤーは皆そろって大変な日常を送る羽目になっているのである。


 ……え? 私だけですか?



 2002/10/24(木)


 蟻足が500個を超えたので、錬金をやってみることにした。

 実はこのゲームを始めたばかりのころ(無謀にも)錬金に手を出したことはあったのだが、そのあまりの苦痛な作業ぶりに30分で放棄したという経験がある。今回は改めて、その苦痛に耐える覚悟を決め、錬金してみようと決断した次第である。

 ところがだ。
 ないのである。スライームジェリーが。たしか、最初に錬金をやろうと思ったころ(三ヶ月以上前)にジェリーを200個ほど集めて倉庫に保管しておいたはずなのに。バグで消えたかそれとも酔っ払って売り払ってしまったか、どちらかわからない(明白であるような気もする)が、とにかく一つも残ってないのだ。
 錬金においてジェリーは必要不可欠なアイテムである。さてどうするかとしばし考え、とりあえず街のスライムピットに。そして、黙々とスライム狩り。Triple Energy Boltを撃つ、ジェリーを拾う。その繰り返し。周囲にいるのはセイバーもまともに振れないエルバイン人や旅人ばかりである。
 走りまくりながら休みなくTriple Energy Boltを撃ちまくる私に、同国人の一人が話しかけてくる。「lvl?」と。私は答える。「93」。すると相手は「hahaha」と言い、続けて「liar」と決め付けてきた。まぁ確かにレベル93のメイジが何故スライムなんか狩ってるんだと言われると、ちょっと答えに困るのだが……。

 そういうわけなので、スライームジェリーを激しく募集します。
 オチはない。



 2002/10/25(金)





 100000G落としますた。






   ……ちょっと、しばらくの間一人にしておいてください。



 2002/10/26(土)


 じゅうまんえんの恨みを晴らすため、単独にてレイド。

 いつもどおりミドルランドをつっきりアレス右側から侵入。近くのスライムピットにて2、3人のアレス人を血祭りに上げたあと、東南のスライムピットへ。そこでまた初心者を数名殺害。そのまままっすぐに南下し、蠍ピットでESを撃ちまくる。おもしろいように死んでゆく低レベルの戦士たち。メイジはすぐにESで反撃してくるが、当然PFMをかけているので当たらない。杖で殴ってくる勇気あるメイジをライトエスグラディウスで斬り刻む。青ポーションを10個ほど使い、ほどよく荒れてきたところで次の狩場へ。
 西のスライムピットには、のほほんとレベル上げ&日常会話を繰り広げている一団があった。問答無用でインビジからMass Chill Windを撃ちこみ、逃げ出したやつを狙ってES連打。向かってきた戦士にはEarth Worm Strikeを叩き込む。硬い戦士は適当にあしらっておいて、ほどよいところでインビジ。更に西のスライムピットを荒らしたあと、魔法ショップへ。数人のメイジがショッピングしているのを確認し、店先で待ち伏せ。出てきたところをIce Strike〜Energy Strike。緑ポーションを食いつつ北の蛇ピットへ……。

 そんなこんなで45分間の激闘のすえまきあげたアイテムリスト。


ウォーアクス*2
バトルアクス
セイバー
クレイモア
グレートソード
短剣
魔法成功の杖 成功率+12
アジルショートソード 連続打撃+5
ストロング短剣 連続打撃+2
チェーンホース
男性用金鎖鎧
男性用鎧
染色薬(緑)
その他ポーション、肉、シャツ、靴など沢山。


 わからんのは染色薬(緑)を落とした全身緑色の戦士だ。たしか、プレートメイルにプレートレギンス、緑のシャツ、緑のシューズ、緑のマントという服装だったと思うのだが。あんた、このうえ一体どこを緑にしようとしてたんだよ。っていうか、染色薬って普通は買ったその場で使うもんじゃないか……?



 2002/10/27(日)


 今日はちょっと役に立つ話をしよう。

 パーティで狩りをするとき、戦士の皆さんは自分のポジションを気にして戦っているだろうか。もちろん、メイジがパーティにいない場合はそんなことを気にする必要はない。どこからでも好きなように、モンスターを殴るといいだろう。だがメイジがパーティ内にいる場合はそうではない。なぜなら、メイジにとって魔法をかけやすいポジションとそうでないポジションがあるからだ。

 高レベルのモンスターと戦う際に必要不可欠な魔法が二つある。ParalyzeとBerserkだ。この二つはそれぞれ対象が異なる。一方はモンスターに、もう一方はプレイヤーにかける魔法であるわけだが、「かけやすい場所」が違うのである。図にすると、このようになる。


Paralyze

◎◎◎
△敵△
◎○◎


Berserk

△×△
△敵○
◎◎◎


◎……かけやすい。よほどの混戦でない限り失敗しない。
○……かけやすいが、モンスターの種類によっては失敗する。
△……慎重に狙えば問題ないが、モンスターによってはかからない。
×……根本的に不可能。(本当は可能らしいが方法を知らない)。


 一目瞭然、下側から殴るのが良いということになる。しかも斜め下がベストで、個人的な経験からいえばこのポジショニングで魔法をかけそこねたことはない。追記するならば、左よりも右、つまり右下が最善のポジションである。これは魔法を発動する際のアイコンの形状によるものと思われる。

 先日のバージョンアップによってParalyzeが味方に効かなくなり、Berserkも敵に効かないようになったが、だからといってポジションを気にせずモンスターを攻撃するのはよろしくない。魔法を外せばそのぶん時間もマナも無駄になるし、なにより戦士であるあなた自身が危険にさらされる時間が長くなるのだから。

 まぁ「役に立つ話」というより単なる個人的な要望なのだが。




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