2002/11/25(月)


雨にも負けず ラグにも負けず
デーモンにもジャイアン戦士のイエーにも負けぬ丈夫な体を持ち
レアはなく 決して死なず いつも静かに笑っている
一日にEXP100000と パンと少しの青ポを食べ
あらゆることを 自分を勘定に入れずに
よく見聞きし分かり そして忘れず
PLの木の林の蔭の 小さな骨ピットにいて
東に空腹の戦士あれば 行ってStaminar Drainしてやり
西に倒れたメイジあれば 行ってその遺品を分捕り
南に死にそうな初心者あれば 行って怖がらなくてもいいと言い
北に喧嘩や訴訟があれば 面白いからもっとやれと言い
マナ切れのときは涙を流し
エティン湧きのときはおろおろ歩き
みんなにFuckin mageと呼ばれ
誉められもせず rep+もされず
そういうメイジに 私はなりたい



 2002/11/26(火)


 レベル105になった。
 ついでに錬金も53%になった。

 この錬金だが、すでに何度も書いているとおりまったくもって疲れる作業である。なにしろ50%から51%に上げるためには約250回ほどの錬金作業を(成功)しなければならず、しかもそのための材料は自分で調達しなければならないのだ。材料をすべて他人から買い取る人もいたりするが、普通のプレイヤーがこんなことをしたら、即☆破☆産である。
 幸いなことに私はギルドのメンバーからタダで材料を譲ってもらったりしているため、他の錬金術師たちに比べればかなりマシな方だ。──が、そのための弊害というものも出てくる。その最大のものが、「すぐに倉庫がいっぱいになってしまう」というものだ。

 私は就寝の際、キャラを放置するようにしている。このゲームでは何もしていなくても一定時間ごとに経験値が入るうえ、その値はレベルに比例しているものだから高レベルになればなるほど放置上げは重要になってくるのである。だからして私は一晩中キャラを放置しておくわけだが、これが朝になってアイテムボックスを開いてみると夥しいほどの錬金材料が投げ込まれているのである。まぁ中には壊れた短剣とか男物の短パンとか地図10枚とか、そういう物が投げ込まれていたりすることもあるが。まるで、ちょっとした置き網漁のようである。
 さて、この投げ込まれた材料のうち、数をまとめておけるものは問題ない。問題はまとめることができない材料だ。具体的に言うとオーク肉である。こいつこそが私の倉庫を圧迫する原因、腫瘍なのだ。

 オーク肉は透明魔法試薬の材料である。透明薬は店に売っても350Gになるため、これを作るだけでもかなりの稼ぎになる。従って、オーク肉は重要な資金源であるということになる。よって、捨てるわけにはいかない。とりあえず夜中の間に投げ込まれたオーク肉を透明試薬に変える作業を開始する。これを終えるのにだいたい一時間かかる。
 作業を終えて一段落ついたあたりで、なぜか平日の昼間からログインしているギルドメンバーが私の姿を見つけ、ようやく片付いたオーク肉を再び投げ込んでゆく。私はまたそれを黙々と透明薬に変える。休日の場合など、これがエンドレスになることもある。
 夕方を過ぎると学校や仕事を終えたプレイヤーたちがログインし始め、「材料引き取ってください」というメッセージが私宛てに流される。私はそれを引き取りに行き、再びそれを透明薬に変える作業を始める。他の材料(オーク歯や骸骨片)が足りなくなったときは現地調達に赴くか他のプレイヤーから買い取る。
 夜になると、材料調達の提携を結んでいる何人かの外人プレイヤーからメッセージが飛んでくる。「倉庫がいっぱいで困ってる。早く買い取りに来てくれ!」という具合に。私は透明薬を売り払った金を持って彼らの指定した場所へ向かう。そして、その場で錬金を始める。
 その作業をしている間、ギルドチャットではメンバーたちが楽しく狩りなどしている様子が伝えられているのである。私はちょっと寂しい気分になりながら、ひたすらオーク肉を透明薬に変える作業を続ける。
 そうしてようやく全てのオーク肉を片付け、夕食を摂り風呂を浴びて酒など飲みつつプレイ再開すると、アイテムボックスには再びオーク肉が放り込まれているのだ。一体、こういうときの気分をどう言えばいいのだろう。うれしい悲鳴というやつだろうか。それとも終わりのない悪夢だろうか。──いや正確にはいつか(スキル100%になったとき)終わりが来るのではあるけども。

 あぁ、一応誤解のないように言っておきますが、オーク肉をくださる皆様には本当に感謝しておりますですよ。ただ、錬金のやりすぎで頭がおかしくなりそうだというだけのことです。えぇ、本当に。まぁ、もともとマトモな頭を持っている人は錬金なんかやらないとは思うのですが。



 2002/11/27(水)


「isn't there any doctor?」

 そういうメッセージが画面左上に出ているのを見た。
「doctor? mageじゃないのか?」と思いつつ骨狩りを続けていると、まったく同じことを他のプレイヤーが問いかけた。すると、こういう返事が返ってきたのだった。
「NO, I'm looking for the doctor」

 その後のやりとりはあまりにログが早いのと私の英語力が貧困なのとで、細かい部分はわからなかった。だが、どうやらケガをしていて医者の意見が聞きたいらしいことは理解できた。それも、頭をぶつけて出血が止まらないのだという。一体どうすればゲームの最中に頭をぶつけて出血するのかは不明だが、とにかくそういうことらしい。

「そりゃ大変だ」
「医者はいないのか?」
「ゲームなんかやってないで病院へ行け」

 たちまち、そういうメッセージが流れ始めた。皆、案外いい人である。少なくとも「EKさせろ」と言う人は一人もいなかった(と思う)。そうして少しの間、「医者はいないのか?」というメッセージが画面左上を占拠した。

 まるで、ちょっとした映画かドラマのワンシーンのようだった。──そう、フライト中の旅客機の中でスチュワーデスが「急病人が発生しました! お客様の中にお医者様はおられませんか」と呼びかけるシーンである。誰でも一生に一度ぐらい出会っておきたい場面であろう。
 ドラマの中ではこういうとき、あまりやる気のなさそうな非番の医者(しかし名医!)が手を挙げて傷病者を看ることになる。傷病者はたいてい脳卒中や心臓発作で倒れたパイロットか政財界の大物である。そして、そこから生まれる人間模様。おお、これぞドラマだ。
 が、残念なことに頭をぶつけて出血している男はただのヘルブレスプレイヤーで、求められている医者もまたヘルブレプレイヤーなのであった。会ったこともない他人の職業を勝手に決め付けるのは良くないが、とりあえず政財界の大物がヘルブレスをやっているということはなさそうである。

 しかし、皆の呼びかけもむなしく医者が名乗り出る気配はなかった。──こういうとき、私は医学の道を選ばなかったことを後悔するのである。もし私に医師免許があれば颯爽と名乗り出て、あわよくばrep+してもらえたかもしれないというのに。



 2002/11/28(木)


 キャラの名前というのは重要なものだ。名前一つで/tgtコマンドの対象にされたり/rep-されたり、あるいはtrade repに応じてもらいやすくなったりもする。敵にはタイピングしにくく味方にはタイピングしやすい名前がいい。そんな名前があればの話だが。
 今日語っておきたいのは、しかしそういう話ではない。キャラクター名そのものが有する力。それを語ってみたい。

 たとえば私のキャラ名はLiqueurという。この名前のせいでフランス人と間違えられることが多いというのは以前書いた。しかし、それだけではない。先日、町の中を歩いていると突然「I love u」と言われたのだ。またキチガイかと思って彼の名前をチェックすると、彼はAlcoholic(アルコール中毒)という名前だったのだ。なかなか洒落た男だ。(女かもしれない)。

 ヘルブレスは基本的に対人戦闘がメインのゲームであるので、強そうな名前のキャラが多い。Hell MageやThe Death、Black Handなど、名前を見ただけで逃げたくなるではないか。──実際、私はBlack Handに3回ほど殺されている。畜生。

 それはともかく、今日見かけた戦士はSlayerという名前だった。これまたかなりカッコイイ名前だ。そしてメタルだ。最後にsを付けるとたちまちオタアニメだが。なにしろスレイヤーである。かなり強そうだ。いや、強くなければならない。
 Slayer氏は裸にフランを一本だけ持って、数頭のクレイゴーレムと渡り合っていた。場所はプロミスランド。その名前からしてレベル100オーバーに違いない彼はあっというまにゴーレムどもを殲滅してしまうだろう。──そう思い込んでいた私の前で、彼は恐ろしく緩慢な動きでフランを振るのであった。それは、私が杖を振るのとまったく変わりない速度だった。ゴーレムに囲まれながら、彼は「heal」と叫んだ。そして、その直後にバッタリ倒れた。遺品は赤ポーション(小)であった。

 これはかなり名前負けしたキャラの例である。というよりバカの一例といった方が正しいかもしれない。「おまえがそんな名前を名乗るのは百年早い」と言ってやりたいところだ。少なくともウェアウルフを一人で倒せるぐらいにならなければSlayerなどと名乗ってはいけない。それは強い者のみに許される名なのだ。

 私など、その点では完璧である。なにしろ毎日酒を飲みながらプレイしているのだから。──もっとも、その代償はEXP+20杖だったり100000Gだったりするわけで、あまり自慢できることではないのだが。



 2002/11/29(金)


 ギルドメンバーで徒競走を開催した。

 どういうものかというと、決められたコースをただ走るだけの競技である。コースの選定でかなり手間取ったものの幸いにというか偶然にというか、農場の片隅にぐるりと一周できる高台があったのでそこをトラックにした。




 スタート前の集合写真である。パンと肉で作られたスタートラインが微笑ましい。このあと、ギルドマスターYamamaya-氏が審判、misono嬢が号砲手となって競技開始。

 ただ走るだけなので、たいした技術や反射神経が要求されるわけではない。まぁコース取りなどでちょっとしたコツみたいなものもないことはないが、基本的には回線速度とマシン本体のグラフィック性能の問題だ。ちなみに私のマシン環境はこんなところである。

celeron(R) 1.40Ghz CPU
512MB RAM
Radeon7500

 回線はADSL8Mで、RadeonはRage3D Tweakで限界までクロックアップしてある。ノートPCとしては悪くない環境のはずだ。実際問題、メイジは戦士に追われて逃げることが多いのだが普通に走っていてつかまったことは一度もない。(逆につかまえることは頻繁にある)。

 さて、競技の方である。号砲一下各馬きれいにスタート……とはいかなかったが、それでもプレイング環境はあからさまに現れた。幸いにも──というより予想通りに私の足は速かったが、他の参加者の遅いことといったらない。特にbecks君などひどいもので、あっというまに画面外に消えたかと思うとそのまま回線落ちである。せめて完走してくれ。

 レースの結果、私は2位であった。しかしこの1回めのレースではスタート位置が不公平であったと1位のamady氏から申し出があり、公正なスタート位置を決めなおして改めて2度目のレースがおこなわれた。結果、私の順位はまたしても2位であった。

 その後、2位の賞品であるサパアイアをいただいて次のイベントであるバトルロイヤル大会へ。これに関しては特に言うことはない。次にやるときは最初にPFM戦士を殺しましょう。>参加者各位。




 2002/11/30(土)


 デスバレーでパーティーを組んで狩りをしていると、いきなりアレス人に襲われた。インビジからバトルハンマーイエー。人殺しの王道である。低レベルのメイジなら3秒で死ねる攻撃だ。
 オウガとの戦闘中だったので、こちらの戦士は少し離れた場所にいる。とりあえずその方向へ向かってダッシュ。戦士同士の殴り合いになったのを見計らってインビジ。そっと様子をうかがう。案の定、戦士同士の攻撃はほとんど当たらない。当たっても致命傷にならない。こちらの戦士は三人、向こうは一人だったがまるきりダメである。
 アレス戦士はすぐにその戦いをあきらめ、ハンマーを杖に持ち替えた。やべぇと思う間もなくDetect Invisibility。見破られるオレ。猛然と走り寄ってくるアレス戦士。再びインビジ、ディテクト、インビジ、ディテクト。そのうちマナが尽きたのか、ハンマーを手にして当たらない攻撃をこちらの戦士に向け始めた。
 しかし、当たらない。アレス戦士は角兜だったが、こちらのパーティーの戦士も二人はレベル100オーバーなのである。すぐにアレス戦士はこの不毛な戦いをやめた。──が、なかなか立ち去らないのである。さらに、あろうことかこちらの戦士が狩りを再開するとその後ろについて歩いてくるのであった。しかも、ただついてくるだけではない。モンスターとの戦闘が始まると一緒になってモンスターを叩いているのである。一見するとパーティーメンバーだ。
 どういうことかと考える必要もなかった。つまり、私が戻ってくるのを待ち構えているのである。ためしにインビジを解いて近付いてみると、待ってましたとばかりに腹をすかせたイヌのごとく駆け寄ってくるではないか。
 仕方なくインビジ→ディテクト→インビジ→ディテクト。同じことの繰り返しである。たまにハンマーがヒットして靴やレギンスが脱がされる。この変態野郎め。
 それにしてもしつこい男である。10分以上も私たちにつきまとい、私が姿を見せるたびにイエーだ。PFMもかかっているので、こちらからは何もできない。むなしい。こういう場合は強制リコールを待つしかないのか……と考えていると、突然のオーガ湧き。しかも至近距離!
 さすがに逃げ出すアレス戦士。これはチャンスばかりにインビジ状態で追跡──しようとするも、よく見るとパーティーメンバー全員危険な状態である。ここは彼らにインビジをかけなければなるまい。
 が、Invisibilityを詠唱した瞬間、背後からハンマーイエーヒット。どうやらインビジ状態で追跡していたらしきアレス戦士。しつこすぎるぞ、おい。周囲はオーガだらけである。たちまち彼も私もBOX状態。こんなときは慌てず騒がず透明魔法試薬だ。
 そして、私は見事にインビジ発動。同時にアレス戦士はオーガにタコ殴りにされる。そのまま死ね! ──と思った瞬間、回線切断。おーい。

 3分ほど待ってからログインすると、そこには大赤ポーションが1個だけ落ちていたのであった。それがアレス戦士の遺品なのかどうかは不明である。もしかするとパーティーメンバーの遺品だったのかもしれない。




 2002/12/01(日)


 最近、PL骨ピットがイマイチになりつつある。以前は10分間で10k程度の経験値を稼ぐことが可能だったのだが、このところ5kが限度でひどいときには3kほどにまで落ち込んだりする。かといってここ以上に効率の良い場所もないので、仕方なくちまちまとPL骨ピットに常駐する毎日。
 だが、たまにどういうわけかまったく人がいなくなるときがあって、そういうときにはこれこそ天国なのではないかとさえ思うほどである。下の画像はそんな嬉しい瞬間を収めたものだ。



 10匹以上のスケルトンにEnergy Strikeを撃ちこむときの快感は、メイジプレイヤーなら誰にでも共感してもらえるものだろう。しかも装備しているのがEXP+の杖だったなら、もうエンドルフィン大放出である。(持ってないけどなー)。

 最近、私は頻繁に夢を見る。それは無数のスケルトンに囲まれて至福を味わっている夢だ。それは満漢全席料理に囲まれているかのような──いやそれ以上の愉楽である。とはいえ、大抵の夢がそうであるように、夢の中の私もまた今まさにEXP+30杖からのEnergy Strikeを発射しようとしたその瞬間に目が覚めるのだが。



 ちなみにPLができる前はこのような夢をよく見ていた。たぶん、うなされていたのではないかと思う。ていうか夢の中よりひどいだろ、これは……。

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