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Information
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hardvoiled version
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おや、お嬢さん。こんな所へ何の用だ? ここは君のような人種の来る場所じゃあないぜ。まさか調査依頼に来たっていうのか? ……ははっ。いや失礼。それじゃ、とりあえず話を聞こうか。……俺か? 俺は牛男爵アイスと呼ばれている。一応、ここの責任者だ。……なに? なぜ男爵なのかって? くだらない質問だな。そんなことを知って何の役に立つっていうんだ? そんなことを訊くぐらいなら、君は俺にこう訊け。「どうしてそんなにタフなんですか」と。それに対する答えは簡単だ。タフでなければ生きていけないから、さ。
で、君はここへ何をしにきたんだ? ロマノフ王朝の遺産でも探すつもりか? それともKGBに追われているのか? あいにく、そのどちらも俺には解決できない。かといって、君の旦那の浮気調査もごめんだ。……なんだって? 猫のミーちゃんがどこかへ行ってしまったって? ……すまない、どうやら幻聴が聞こえたようだ。どうも今朝から頭痛がひどくてね。手があいているなら、そこのアスピリンを取ってくれないか? ……あぁ、ありがとう。ついでに、そこのターキーをよこしてくれ。……ふぅ。
さて、依頼は何だって? ……ふむ、おもしろい雑文を探しているのか。変わった依頼だな。最近、巷ではそういう物が流行っているのか? いやなに、先日も同じような依頼をひとつ片付けたのさ。まったくアクビの出るような依頼だ。こんなものでも良ければ、これで依頼は終了なんだがな。前回の依頼者にはなかなかの評判だった。俺に言わせれば、ゴミのような代物だがね。
ところで君は、どこで俺のアドレスを知ったんだ? 電話帳の「名探偵」の項か? それとも「クール」の項かな? まったく、電話帳ってのは便利なものだな。その気になれば、麻薬の買い付けから棺桶のオーダーまで、電話一本で任せられる。もちろん、俺のような名探偵に連絡をとることも、な。
どうやら薬も効いてきたようだ。君のほうはどうだ? その原始的宗教の信者が書いた述懐は君の望む「面白い雑文」とやらの基準を満たしていたかな? 答えがイエスだったなら、この依頼は終了だ。報酬は半額にサービスしておこう。持ってきてなければ、その薔薇色の唇をいただいておくことにするが。……あぁ、持ってきてあるのか。なら、遠慮なく受け取っておこう。……ちょっと残念だがね。
他に依頼がなければ、話は終わりだ。そこのドアから出て行くといい。まちがっても表のドア──いま君が入ってきたドアからは出て行かない方がいい。俺はいま、ちょっとした組織と対立していてね。何かのまちがいで狙撃されたりしないとも限らない。まったく物騒な世の中だ。
もし時間があるなら、ここにそろっている他の雑文を読んで行くのも悪くないだろう。掲示板とやらに目を通してみるのも退屈しのぎにはなるかもしれない。お茶は出ないが、そのターキーなら好きなように飲んでくれてかまわない。もっとも、グラスはどこにもないがね。あぁ、依頼を変更するという手もある。グラスを二つ用意してきて一緒に酒を飲む、という依頼にね。むしろ俺のほうから依頼したいところだが、そういうワケにはいかないんだ。なぜかって? 俺が探偵で君が探偵じゃないからさ。もしこれが逆の立場だったら、俺は間違いなくいま言った内容の依頼を頼んでいるところだったがね。まったく残念なことさ。
で、依頼の変更はあるかな? ……あるって? それじゃ折角の依頼だ。いいワインでも買ってこよう。なに、金ならあるさ。酒を買うための金ならね。店もいい所を知ってる。そこの大通りを三区画ほど南に行った十字路の向かいに、Gary's Gardenって名前のセラーがあってね。なかなか悪くないワインを……え? そうじゃないって? その依頼じゃない? ミーちゃん? 猫の? ……探してくれって? 特徴は毛が長くて真っ白で、しっぽが短くて、お耳が大きくて……